自己紹介


はじめまして。近藤紀文と申します。
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日常生活で思ったことについて、様々な視点で書いていきます。

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2019年2月1日金曜日

年頭の挨拶に代えて ~オーディオの歴史をひもといた中での平面再生の立ち位置

年頭の挨拶というには遅すぎの感がありますが、
新年に入って現在までの芸術情報研究所の
特にオーディオに関する研究成果と今後の方向性について
堀尾研究員の奨揚もあり、オーディオの歴史をひも解きつつ、
じっくりと考察してみました。  


世間に出るや否や、捉えられることもなくその場で消えていく「音」
というバケモノを初めて再生可能にした、

要するに人間が手に持てるモノの形に変えたのが、
1877年にエジソンが発明したフォノグラムです。

もちろんモノラル録音でしたが、次に人間が欲を出したのは
現実の世界で起こる音の左右の広がりを再現すること。

すなわち、ステレオフォニックへの欲求です。  


















フランスでオペラの舞台上の音を左右2方向からマイクで拾い
それを離れた場所まで2本の独立した回線で送り
左で拾った音は左の耳に、右で拾った音は右の耳に、
という具合に電話でステレオ実況ナマ中継をしたのが1881年。

この流れを汲んでFM放送が開始されるよりずっと前、
NHKのAMラジオでは第1総合放送で左、第2教育放送で右を流し、
2台のラジオでステレオ感を味わう放送をしていたといいます。

さすがに筆者はこの時代は知りませんが、
これを録音するというレベルに達したのは意外に早く、1930年代。

その録音方法というのが
レコードの溝の左右に左右の音を別々にカッティングするという、
まさに現在も使われている手法です。

実はこの左右2チャンネル音の再生というオーディオの王道の途中、
1970年代に4チャンネルというあだ花が咲いたことがありました。

要するに視聴者の前に2本スピーカーを置いて前方左右再生、
後にも2本スピーカーを置いて後方左右再生という方式で、
当時の4チャンネルの宣伝文句が
「あなたは、オーケストラの中にいるような感覚を味わえる。」

今考えれば非現実的音響再生の最たるものですが
我が家も時代の波に乗って、
1974年にはテクニクスから出たモジュラー型の
4チャンネルステレオを買いました。

この4チャンネル、今考えると、大きく二つの方式に分けられました。

ひとつは日本ビクター開発のCD-4を代表とした
ディスクリート4チャンネル方式。

前方左右、後方左右で録音し
前方左右2チャンネルのそれぞれの可聴音域の上に、
30キロヘルツ超くらいの人間が聞こえない周波数帯で
FM変調した後方左右の音を乗せてカッティングし、

再生時は、前方左右可聴音域通常再生プラスFM変調していた
後方左右の音を可聴音域に変換して、
視聴者後方左右のスピーカーで再生するという、
なかなか高度なワザです。
 



もうひとつが、CBS・ソニーが旗揚げのSQマトリクス方式とか、
RM(レギュラーマトリクス)とかのマトリクス方式4チャンネル。

4チャンネルで録音したソースをカッティングの段階で2チャネルに直し、
再生段階で4チャンネルに直すという、
筆者には今でもよく理解できない方式なのですが、
CD-4と比べると後方分離は悪かったのは記憶にあります。

この4チャンネル方式が細々と生き残って現在に至っているのが
5.1とか7.1とかのサラウンド方式と筆者は理解しています。

いずれの方式にせよ、この方式には人間の生理から考えると
決定的な欠陥が有ります。

すなわち、人間は後方からの音に極端に
恐怖又はそれに起因した疲れを感じることです。

無理もありません。

人間の目は前しか向いていませんから
後方からの危険の来襲に関しては、まず音で感じて
あわてて首を回して目で危険を確認する、
というプロセスがあります。

基本的には、人間の聴覚では
後方からの音はまず危険な音と推定する、
という本能がDNAに組み込まれて
現在に至っていると筆者は考えています。

結果として、後方からの音は精神的に疲れるのです。




結局、4チャンネルは聴くと短時間で疲れと飽きがくることを
筆者は10代で悟り、原点に帰って2チャンネルで聞いていました。

映画館でサラウンド方式採用の映画を見ると
後方からギイィーという扉が開く音がしたり、
ジェット機の音や弾丸の音が後から前に飛んだりすると
かなりギクッとします。

1回や2回ならスリリングでいいですが
それ以上やられると視聴者はかなり神経をすり減らし、
最後はヘトヘトに疲れます。

こんなのでは、商業ベースには乗りません。
しかしながらです。オーケストラの前と後で分けて録音したCD-4の発想で、
それをそのまま前後とも視聴者の前方に持って行って再生したら、
より舞台上のオーケストラの音に近づくのではないでしょうか。

我が家にあったテクニクスの4チャンネルステレオでは、
4チャンネルバランサーの名のもと、球の上に軸を付け、
これを前後左右に動かすことで
前後左右のスピーカーの音量を自由に調節できる機能が、
アンプのフロントパネルに付いていました。
いい発想じゃないですか。

70年代の4チャンネルは
視聴者がオーケストラの真ん中にいる感覚を楽しむ、
など、ナンセンス極まりない発想で売り出しましたが
システムを全部前に持って行って平面再生化、
あるときは後方のパーカッションを強調し
あるときは前方のヴァイオリンを強調する。

これをバランサーの軸1本でできれば結構面白い。
平面再生でのポイントはこのへんにあります。




左右のバランスは、
アンプのフロント面にある左右バランスつまみで自由に変えられますが、
現在筆者がやっている前後別々のアンプによる
前後の音のバランス調整というのは非常に煩雑です。

アンプの違い、スピーカーの違いにより
好みの音響空間を構築するために
前後それぞれのアンプのボリュームツマミを動かして
最適音量にするにはかなりの熟練がいります。

もっといいポジションがあるのではないかと、
相当に試行錯誤します。

これが楽にできないか。
このへんが今年のひとつの焦点になりそうです。