自己紹介


はじめまして。近藤紀文と申します。
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2016年8月11日木曜日

ヘンデルの掛けた保険

英国は紳士の国を標榜しながら、その実、世界有数の賭博大国でもある。

ブックメーカー、すなわち 『懸け屋』 なる商売が合法的に存在し、
森羅万象、世間に起きるあらゆることを貪欲に賭けの対象にする。

保険という制度も、この英国流賭博の一形態としてスタートした。

物資・財宝を満載した商船がテムズ川を船出する。

船主が賭け金を出し、金持ちたちが出資した組合と、船の安否に関する賭けをする。

船が、積荷と寄港各地の名産品とを交換取引し、
無事帰港となれば、世界の珍品を満載した船は、まさに宝舟。


組合側も、もらった賭け金を丸取りかつ、分配できるから、
双方いいことずくめの万事良しである。

しかし、船が遭難し、沈没の惨劇ともなれば、
組合はあらかじめ賭けた ( というか、契約した) 金額を、家財を売り払ってでも
船主に支払わなければならない。

これぞ有名なロイズを始めとした、保険組合の誕生である。


ドイツで生まれ、英国で大成した作曲家ゲオルク・フリードリッヒ・ヘンデルと言えば、
ハレルヤ・コーラス等の名曲でおなじみで、日本では “ 音楽の母 ” と呼ばれ、

小中学校の音楽室の後ろ壁を飾る肖像画の定番の一人だが、
この人、実はなかなかにバクチ的人生を送った人だった。 

 
独ハノーヴァー選帝侯の宮廷楽長という職を得ながら、
興業主の厚遇に欲が出て、
出張したロンドンで作曲・公演したオペラが連続大ヒットの大当り。

味を占めたヘンデルはロンドンに居着いてしまい、
ついには宮廷楽長職を事実上放棄してしまった。


しかし、史実は奇なり。

ヘンデルのかつての雇主ハノーヴァー選帝侯ゲオルクが、英女王の死去に伴い、
王位継承権からジョージ一世として英国王に即位することが決まる。


内心穏やかでないのはヘンデルだ。

再び自分の住む国の王となったジョージ一世は、ハノーヴァー候時代、
不倫した妻を32年間も幽閉したことで、
世間的には好虐的性格と思われていたから、たまらない。


名実共に自分の首をかけた大博打に打って出た。


王即位後間もなく、テムズ川で催された舟遊びのサプライズで、
楽員たちが乗った船が王の船に近付き、組曲を演奏し始めた。

ヘンデルの代表作であり、バロック音楽と言えばこの曲、『 水上の音楽 』 の誕生である。


曲といい、演奏されたタイミングといい、王はいたくこれが気に入って、
ヘンデルの前科を許したというのが通説だが、

実際はヘンデルの名がロンドンでは有名になり過ぎていて、
王も過去のことで処罰などできる状態になく、

ヘンデル自身もそのことを心得た上で、
さらに安全のための保険を掛けた、と見る説も有力だ。
 

保険誕生の地ならではの発想だ。

 

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